陸上自衛隊「修親」1993年8月号  

入校にあたっての抱負

 湾岸戦争をきっかけとして、昨年後半から今年にかけて、日本国内では憲法論議が活発となっています。
 共産党を除く与野党、労働組合、一般の国民のレベルにおいても、憲法改正へのタブーが無くなっていると思います。とりわけ、問題点の一つである第九条についても、時代に対応出来るように、改正したほうが良いのではないかという気運が、国民の中にある程度高まっていることは、好ましいことだと思います。自衛隊のPKO等の国際貢献活動に対しても、高い評価を国民から受けています。
 今まさに、内外ともに自衛隊は注目され、脚光を浴びています。そのような中で、我々は久留米市にある陸上自衛隊幹部候補生学校に入校したのです。
 防大時代は学生ということで、甘えが許されましたが、陸上自衛官、つまり職業軍人となったからには、甘えは許されないと思います。
 我々はこれから約30年間、自衛隊という組織の中で、国家に奉職する上で、最初の段階として幹部候補生学校で初級幹部としての教育を受けます。ここでの教育は自衛隊生活をする上で、基礎の中の基礎を、半年間という短い期間に修得せねばならず、時間を無駄には出来ないと思います。毎日を時間に追われ、与えられたことをするのではなく、常に世の中の流れにも注意を払い、自衛官であると同時に、社会人であることを忘れてはならないと思います。
 志を高くもち、何事においても意欲的に取り組み、吸収することが大切だと思います。志を高くもっていれば、自分自身が落ち込んだ時でも、立ち直りが早いと思います。志なくして、人生を生きることほど、つまらないことはありません。
 若い初級幹部は、気力、体力、精神力が求められます。それらは毎日の体力と精神の練磨によって身に付けて行けると思います。また、体力、気力、精神力に加えて、幅広い知識を身に付けようと思います。体力バカになるのではなく、体力・知力を兼ね備えた初級幹部を目指して頑張ろうと思っています。
 また、新渡戸稲造はその著書『武士道』の中で、武士道では個人よりも国を重んじると言っています。私は、自衛官は現代の武士であり、国に重きを置き、個人を犠牲にしてでも国家防衛に携わって行くべきだと思っています。
 国なくして、国民の生活は成り立ちません。国民の税金で我々は教育を受け、国防の任にあたらなくてはならず、国民の負託に応えるためにも、ここでの半年間を精一杯努力・精進したいと思っています。
 最後に、幹部候補生学校での半年間が終わった時、充実感と、より高い志を持って卒業出来れば最高だと思っています。

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