フジ・サンケイグループ行革
キャンペーン実行委員会主催
第9回土光杯全日本学生弁論大会
産経新聞社杯入賞

『国際社会に通用する政治改革の断行を』
   

『国際社会の一員としての政治改革の断行を』

 昨年、我国の国会は、PKO法案を巡って、様々な議論が展開されました。防衛大学校の学生として、この議論を眺めていて疑問に思ったことが幾つかありました。その中の一つに、PKOへの自衛隊の参加は海外派兵であり、いつか歯止めを失い、海外侵略につながるという議論です。実際、自衛隊の運用はシビリアンコントロールの下でなされます。即ち派遣される兵力も装備もそれに期間も国民から選ばれた代表者による国会の議決により、決定されます。しかし、そのような議論がなされるということは、政治家や国民が我国の国会における民主主義の手続きに対して信頼を置いていないのではということです。二つ目は議会のもたつきにより国際貢献のタイミングを失うのではないかということです。三つ目は、もし万が一にも仮に日本が有事の場合、今のような政治体制のままで、政治家がリーダーシップを本当に発揮してくれるのか。或いはシビリアンコントロールの下で動かなければならない自衛隊が、有事にうまく対処出来るよう政治が機能してくれるのかという不安です。これらの事を解決するための様々な改善策がある中で、次の三つの実現が緊急だと考えます。まず第一に、年間を通じて開かれる通年国会の実現をはかるということです。湾岸戦争では、折角、多額の資金貢献を行ったにもかかわらず、国会が休会中ということでそのタイミングを失って、国際的批判を受けました。しかし国会が常に開かれていれば、適切に国際的貢献を果たすことも出来るでしょう。同時に有事の際にも迅速に対応出来るはずです。また現在の国会は一度閉会すると審議の終わっていない法案は審議未了、あるいは廃案となります。このため与野党の意見の対立するような法案が提出されると、野党は審議を引き伸ばし何とか廃案に持ち込んだり、取引きの材料にしようとします。加えて審議拒否やPKO法案が可決された時に見られた一部野党による牛歩戦術などの物理的抵抗は、国民の政治不信を生むだけで何の進歩もありません。このような現状を少しでも打開するためにも現在の会期不継続の原則を改めて、法案は議員の任期中は継続審議する形での通年国会の実現をはかるべきなのです。第二番目は国会が言論の府としての役割を果たすために、ディベート中心の議会運営に改めるべきです。政治家は自分の言葉で政策を語るべきであり、国会は政治家同士のディベートつまり討論或いは、政策論争の場でなければなりません。そのために政治家はあくまでも官僚に依存すべきではありません。たとえば国会内の委員会においても、現在のような野党のただ『質問するだけ』、閣僚は『答弁するだけ』、おまけに答弁が官僚の書いた『作文』をただ読み上げるだけのケースが多いと聞いています。これでは政治に緊張など生まれるはずがありません。やはり討論中心の議会運営という観点から政府対議員ではなく、国会は政党対政党として政策を掲げた討論の場とすべきです。政権党対野党という形で、自由闊達な討論をするのです。答弁書を持たず、大所高所から討論すべきなのです。国民にとって政権党対野党の一対一の対決は、わかりやすいはずです。また討論しやすいようにイギリス議会のように、ベンチ形式に変えることも一つの手でしょう。それに加えて、やはり実りある討論に結びつけるために、当然、議員や政党に政策立案のスタッフの充実をはかる必要があります。政党に政策研究所を設けたり、行政に頼らない独自の情報を持ち、議員にも政策スタッフを設けるための補助を国から出すべきです。こうした点が実現出来れば、国会審議の質的向上にもつながり、目に見える形での政治の実行が出来るはずです。第三番目は国会で与野党の意見が対立するなど、事態が行き詰まった場合には、国民の判断を仰ぐことも必要になってくるでしょう。つまり間接民主政治である日本の議会制の中に必要に応じて限定的に直接民主政治の手法である国民投票を実施し、国民の審判を仰ぐことも必要になってくるのです。湾岸戦争の時の自衛隊派遣問題、カンボジア和平への自衛隊のPKOへの積極的な参加などは、国民の判断をもっと早く集めることが出来たならば、あれほど政策決定に時間はかからなかったでしょう。以上述べたような『通年国会の実現』『ディベート型の議会』『国民投票の実施』というような政治改革の実現は簡単なことではありません。いずれも憲法問題と絡んでくるからです。憲法では国会の会期の会期制を定めており、国民投票の制度化に関しても簡単にいくものではありません。しかし、いつまでも日本国憲法を『不磨の大典』として扱うべきではありません。思い切って憲法問題にまで踏み込んだ活発な議論を戦わせる中で政治改革を行うことが必要なのです。自衛隊の海外へのPKO派遣にあたっても憲法違反との声が根強くありました。憲法の規定ゆえに国際的な要請にも答えられないというなら、日本の現在置かれている立場から、これらの点も含めて改めて検討する時期に来ているのです。日本国憲法が制定されて以来約半世紀が経ちました。日本国憲法は改正規定が国会議員の3分2以上の賛成と、国民投票の過半数の賛成というきわめて厳格な規定であることや、憲法議論が戦後、日本国内において『腫れ物にさわる』かのごとくタブー視されてきたこともあり、一度も改正されたことのない、世界でもまれな憲法なのです。本来、憲法の内容が国内外を問わず社会の情勢に対応しきれない状況が出てくれば、これを改正し、補うことはむしろ当たり前の政治的な責務と言わなければなりません。国際社会においては、ベルリンの壁の崩壊に続く一連の東欧、ソ連邦の崩壊による東西冷戦構造が終焉した今日、世界が新たな国際秩序を模索する中で、国際的な政治的視点に立って憲法問題を議論する必要があるのです。憲法改正なくして真の政治改革はないという立場で、今こそ、憲法見直しまで踏み込んだ大胆な政治改革を断行するのです。そうして政治を活性化し、きたるべき新しい時代、21世紀の国際社会に通用する国家となるべく備えるべきなのです。

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